朝スマートフォンのアラームで目を覚まし、電子レンジで朝食を温め、交通系ICカードで改札を通り、車のナビで道を選ぶ。こうした日常の一つひとつに電磁波が関わっています。本稿では、生活を支える電磁波技術を「通信と測位」「家庭」「医療」「移動」の4つの場面に分けて整理します。
通信と測位
携帯電話は数百MHzから数GHzの電波で基地局とつながります。家庭のWi-Fiは主に2.4GHz帯と5GHz帯、Bluetoothは2.4GHz帯を使います。テレビ放送はUHF帯の電波で、ラジオはそれより低い周波数です。位置情報を担うGPSなどの衛星測位システム(GNSS)は、複数の衛星から届く約1.5GHz帯の信号の到達時刻の差から受信機の位置を割り出します。カーナビだけでなく、通信網や金融システムの時刻合わせにもこの信号が使われています。
家庭の中の電磁波
- 電子レンジ:2.45GHz帯のマイクロ波で食品中の水分子を振動させて加熱します。庫内から電波が漏れないよう遮へい構造になっています。
- IH調理器:コイルに高周波電流を流し、電磁誘導で鍋そのものに電流を起こして発熱させます。火を使わない加熱の代表例です。
- 赤外線リモコン:目に見えない赤外線の点滅で信号を送ります。テレビやエアコンの操作に広く使われています。
- 非接触ICカード:交通系ICカードなどは13.56MHzの電磁界で読み取り機から電力と信号を受け取り、電池なしで動作します。
- ワイヤレス充電:IH調理器と同じ電磁誘導の原理で、コイル間で電力を送ります。
医療での利用
X線撮影とCTは、X線が体の組織によって透過しやすさが違うことを使って内部を画像化します。MRIは強い静磁場と高周波の磁場で体内の水素原子核の信号を読み取る技術で、X線のような電離放射線を使いません。放射線治療は高エネルギーのX線やガンマ線でがん細胞を壊します。赤外線体温計は体表から出る赤外線の強さで温度を測ります。なお超音波検査は音波を使う技術で、電磁波ではありません。
移動と安全
自動車の衝突被害軽減ブレーキや車間維持には、76GHz帯などのミリ波レーダーが使われています。LiDARは赤外線レーザーの反射で周囲の形を測ります。高速道路のETCは5.8GHz帯の電波で車載器と料金所が通信します。空では航空管制レーダー、気象では雨粒の反射を捉える気象レーダーが、安全な運航と防災を支えています。
日本への示唆
こうした技術はそれぞれ別の周波数帯を使い、互いに干渉しないよう電波法のもとで総務省が周波数を割り当てています。電波は有限の資源であり、機器の側にも他の機器を妨害せず、妨害を受けにくいこと(EMC)が求められます。日常のあらゆる場面が電磁波に依存するほど、太陽フレアによる測位の乱れや電磁的な障害が起きたときの影響範囲も広がります。何がどの帯域に依存しているかを知っておくことは、便利さを享受するだけでなく、備えを考えるうえでも意味があります。