宇宙天気予報は、気象予報と同じく「観測→モデル→警報」の流れで成り立っています。米国ではNOAAの宇宙天気予報センター(SWPC)、日本では情報通信研究機構(NICT)が毎日予報を発表しています。第2章では、何を観測し、どこまで予測できるのか、そして警報に使われるNOAAのR/S/Gスケールの読み方を整理します。
何を観測しているか
- 太陽面の黒点と磁場:NASAの太陽観測衛星SDOなどが紫外線画像と磁場を連続的に撮像します。活動領域の磁場がどれだけ複雑かが、フレア発生確率の主要な指標です。
- X線フラックス:GOES衛星が常時監視し、フレアの検知と等級(C/M/X)の判定に使われます。
- 太陽風:太陽と地球のあいだのラグランジュ点(L1)に置かれた監視衛星が太陽風の速度・密度・磁場を測ります。CMEが地球に届く数十分前の先行情報になります。
- 地磁気:地上観測所のデータから磁気嵐の指標であるKp指数などが算出されます。
予測の時間軸と限界
フレアが「いつ起きるか」は、現在も確率予報にとどまります。活動領域の複雑さをもとに、数日先までにMクラス・Xクラスが起きる確率が示される形です。さらに、フレアの電磁波は光速で届くため、発生を検知した時点で影響も始まっています。フレアの警報は事実上「事後通知」であり、事前に取れる対策は確率情報に基づく準備に限られます。
一方、CMEは地球到達まで1〜3日かかるため、コロナグラフで検出してから到達時刻と磁気嵐の規模を予測する猶予があります。ただし磁気嵐の大きさを左右するCME内部の磁場の向き(南向きだと大きくなる)は、L1点を通過するまで確定しません。到達の数十分前にようやく規模が分かるという構造が、宇宙天気予報の最大の壁です。近年は機械学習を使った予測研究も進んでいますが、確率予報という性格自体は変わっていません。
NOAAのR・S・Gスケール
NOAAは影響を受ける系統ごとに、それぞれ1〜5の5段階のスケールを定めています。地震の「震度」に似た考え方ですが、三つを分けて読むことが重要です。
- R(Radio Blackouts:電波障害):フレアのX線強度に対応します。R1がM1、R3がX1、R5がX20以上に相当し、昼側の短波通信と低周波の航法信号に影響します。
- S(Solar Radiation Storms:放射線嵐):高エネルギー陽子の流量に対応し、極域航路の航空機、宇宙飛行士、衛星に影響します。
- G(Geomagnetic Storms:磁気嵐):Kp指数に対応し、G1がKp5、G5がKp9に相当します。送電網、GNSS、衛星の軌道に影響します。
フレアが起きるとまずRの警報が出て、粒子が届けばS、CMEが到達すればGという順に警報が続きます。三つが同時に高い値になるとは限らない点にも注意が必要です。
日本への示唆
NICTは宇宙天気予報を毎日発表し、大きな現象が予想される場合は臨時情報も出しています。予報が確率的であり、磁気嵐の規模は到達直前まで確定しないという限界を前提に、警報を受けてから短時間で動ける運用手順をあらかじめ用意しておくことが、国内の通信・電力・航空事業者にとって現実的な対策です。第3章では、実際にどの系統がどう影響を受けるのかを詳しく見ます。