EMI(電磁干渉)対策の三手法のうち、電源線や信号線を伝わる伝導ノイズを扱うのがフィルタです。第3回では、フィルタが働く原理、代表的な種類、そして選定と実装で失敗しやすい点を整理します。
フィルタが働く原理
フィルタは、通したい信号や電力には低いインピーダンスを、不要な周波数成分には高いインピーダンス(またはグランドへの低いインピーダンス)を与える回路です。ノイズはインピーダンスの不整合によって反射されるか、抵抗成分で熱として消費されます。効果は挿入損失として周波数ごとにdBで表し、値が大きいほど減衰が大きいことを意味します。
EMI対策で使うフィルタの大半はローパス型です。電源は直流または商用周波数、信号はその信号帯域まで通せばよく、それより高い周波数はすべてノイズとして扱えるためです。
代表的な種類
- ローパス/ハイパス/バンドパス/バンドストップ:通過させる周波数帯による分類です。EMI用途ではローパスが基本で、特定の周波数だけを狙って落とすバンドストップ(ノッチ)を補助的に使います。
- LCフィルタ:インダクタとコンデンサを組み合わせた受動フィルタで、L形・π形・T形などの構成があります。段数を増やすほど減衰の傾きが急になります。
- フェライトビーズ:高周波で抵抗性のインピーダンスを持つ部品で、ノイズを反射せず熱に変えるため、共振を起こしにくいのが利点です。
- コモンモードチョーク:往復の線に同じ向きに乗るコモンモードノイズだけを減衰させ、逆向きに流れる本来の信号や電力は通します。ケーブルの出入口で最も多く使われます。
- 電源ライン用コンデンサ:線間に入れてディファレンシャルモードノイズを抑えるものと、線とグランドの間に入れてコモンモードノイズを逃がすものがあり、安全規格上の扱いが異なります。
選定と実装で失敗しやすい点
第一に、ノイズのモードを見誤ることです。往復の線の間に生じるディファレンシャルモードと、両線に共通に乗るコモンモードでは効くフィルタ構成が異なります。ケーブルから放射されるノイズの多くはコモンモードであり、線間のコンデンサだけでは減りません。
第二に、部品の寄生成分です。コンデンサには配線のインダクタンスが、インダクタには巻線間の容量が必ず付随し、ある周波数を超えると本来と逆の性質を示します。データシートの減衰特性は理想的な取り付け条件での値なので、実装後の実力は測定で確認する必要があります。
第三に、配置とグランドです。フィルタは筐体の出入口に置き、フィルタ前後の配線が近接して結合しないようにします。コンデンサでグランドに逃がしたノイズ電流は、そのグランドが低インピーダンスで筐体につながっていて初めて外へ流れます。フィルタの効きが悪いときは、フィルタ自体よりグランド接続を疑うのが定石です。
まとめ
EMIフィルタは、通す信号と落とすノイズをインピーダンスの差で分ける部品です。ローパス型を基本に、ノイズのモードと周波数帯に合わせて構成を選び、寄生成分・配置・グランド接続まで含めて実装して初めて設計値に近い効果が出ます。次回は放射ノイズ側の対策であるシールドと、すべての土台となるグランドの考え方を扱います。