前回はEMI(電磁干渉)を発生源・経路・被害側で整理し、シールド・フィルタ・グランドの三手法を紹介しました。第2回は、それらを実際の製品開発にどう組み込むかを扱います。EMI対策は回路設計、部品選定、配置と配線、筐体という四つの層で考えると整理しやすく、上流の層で対処するほど費用は小さくなります。
回路設計:ノイズを出さない、入れない
ノイズの発生量を決める第一の要素は、電圧や電流が切り替わる速さです。スイッチング電源やデジタル信号の立ち上がりが急なほど、高い周波数成分が広い帯域に生じます。動作に支障のない範囲で立ち上がりを緩めることは、追加部品なしでできる有効な対策です。
第二の要素は、電流が流れるループの面積です。行きの電流と戻りの電流が離れているほど、そのループがアンテナとして働き放射が増えます。電源とグランドの間に置くデカップリングコンデンサは、高周波電流のループをICのすぐ近くで閉じるためのもので、配置が数ミリ離れるだけで効果が落ちます。
部品選定:帯域と経路に合わせて選ぶ
- フェライトビーズ:高周波で抵抗として振る舞い、ノイズ電流を熱に変えます。効く周波数帯が部品ごとに異なるため、抑えたい帯域に合わせて選びます。
- コモンモードチョーク:信号線・電源線の往復に共通に乗るノイズ(コモンモードノイズ)だけを減衰させ、本来の信号は通します。ケーブルの出入口に有効です。
- 電源ラインのコンデンサ:線間に入れるものと線とグランドの間に入れるものがあり、それぞれ異なる種類のノイズに対応します。
- シールド付きケーブル・コネクタ:ケーブルは機器で最も長いアンテナです。シールドの効果はコネクタでの終端方法に依存するため、ケーブルとコネクタは一組で選びます。
配置と配線、筐体
基板上では、ノイズ源となるスイッチング回路やクロックと、敏感なアナログ回路や無線回路を離して配置し、その間を高速信号が横切らないようにします。ケーブルは基板上のノイズ源から遠ざけ、筐体の開口部からの引き出しは一か所にまとめます。
グランドは連続した面(グランドプレーン)として確保し、切れ目の上を信号が横切らないようにします。筐体を金属にする場合は、基板のグランドと筐体を複数点で低インピーダンスに接続し、シールドケースとして機能させます。詳細は第4回で扱います。
開発プロセスのベストプラクティス
- 早期の検討:企画・回路図の段階で発生源と経路を洗い出し、対策の余地(基板面積、部品予算、筐体材質)を確保しておきます。
- シミュレーション:レイアウト前に電流ループやインピーダンスを確認し、実機での試行錯誤を減らします。
- プリコンプライアンス試験:認証試験の前に、近傍電界プローブや簡易的な測定で問題箇所を特定します。
- 設計ルールの共有:デカップリングの配置、プレーンの分割禁止、ケーブル終端など、繰り返し起きる問題をチェックリストにして設計者間で共有します。
- 規格の把握:仕向け地ごとに適用されるEMC規格と試験条件を、設計の初期に確認します。
まとめ
EMI対策は回路・部品・配置・筐体の四層で考え、上流で対処するほど安く済みます。立ち上がりの速さとループ面積という二つの物理量を意識し、プリコンプライアンス試験で早めに確認する。この手順を開発プロセスに定着させることが、EMC適合を安定して達成する近道です。次回はフィルタの種類と選び方を扱います。