シリーズ最終回は、EMI(電磁干渉)対策に使う材料を扱います。第4回で述べたように、シールドの実力は材料そのものより開口部や継ぎ目の処理で決まりますが、その処理を可能にするのはガスケットや導電性塗料といった材料です。材料の働きは「反射する」「吸収する」「導通をつなぐ」の三つに整理でき、周波数帯と、電界・磁界のどちらを対象にするかで選択が変わります。
反射する材料:金属と導電性コーティング
導電率の高い金属は電磁波を表面で反射し、高い周波数では薄い層でも大きなシールド効果を持ちます。板金や金属ダイカストの筐体、基板上のシールドケース、ケーブルの編組や金属箔がこれにあたります。
樹脂筐体には、導電性塗料、金属めっき、蒸着、導電性フィルムの貼付などで導電層を付与します。塗膜やめっきは薄いため、高周波の電界にはよく効く一方、低い周波数の磁界にはほとんど効きません。低周波磁界には透磁率の高い材料で磁束を迂回させる方法をとり、材料の厚さが効果を左右します。
導通をつなぐ材料:ガスケット・テープ・接着剤
筐体の蓋と本体、基板とシャーシ、コネクタと筐体といった合わせ面は、塗装・酸化膜・わずかな隙間によって導通が途切れやすく、そこがシールドの弱点になります。導電性ガスケットは、金属メッシュや導電性エラストマー、導電布を巻いたスポンジなどでできており、圧縮されて隙間を埋め、合わせ面の導通を連続させます。
- 導電性エラストマー:シリコーンなどのゴムに金属や炭素の粒子を混ぜたもので、柔軟性と導通を両立し、防水を兼ねる用途にも使われます。
- 導電性テープ:金属箔に導電性の粘着剤を付けたもので、試作や修理で隙間やケーブルの終端を簡便に処理できます。
- 導電性接着剤:導電性フィラーを含む樹脂で、部品の固定とグランド接続を同時に行います。
合わせ面に異なる金属を接触させると、湿気のある環境で電食が進み、導通が時間とともに失われます。材料の組み合わせと表面処理は、初期性能だけでなく経年後の性能を左右します。
吸収する材料:フェライトと吸収シート
フェライトは磁性セラミックで、高い周波数ではノイズ電流のエネルギーを熱に変える損失材料として働きます。ケーブルに取り付けるフェライトコアや、基板上のフェライトビーズは、コモンモードノイズを反射せずに吸収するため、共振を起こしにくい対策です。
電波吸収シートは、フェライトや金属粉末をゴム・樹脂に分散させたもので、ICの直上や筐体内壁に貼って近接結合や筐体内共振を抑えます。導電性の繊維や炭素材を含む発泡体は、より厚いぶん低い周波数まで対応します。いずれも効く周波数帯が材料ごとに異なるため、対象のノイズ周波数に合わせて選定します。
選定の基準
- 対象の周波数帯と、電界・磁界のどちらが支配的か。
- 反射でよいか、吸収が必要か(筐体内共振や近接結合の有無)。
- 継ぎ目の導通連続性を、圧縮量・接触面の表面処理まで含めて確保できるか。
- 異種金属接触による腐食、温度・湿度・振動への耐性。
- 加工性、組み立てやすさ、コスト、量産時の再現性。
まとめ
EMI対策材料は反射・吸収・導通確保の三つの働きで整理でき、周波数帯と電界・磁界の別、そして継ぎ目の処理と経年劣化まで含めて選びます。本シリーズで扱った発生源・経路・被害側の整理、伝導と放射の区別、シールド・フィルタ・グランドの三手法、そして設計初期からの組み込みという原則は、どの材料を使う場合にも変わりません。